「タコピーの原罪」で涙腺崩壊、心をえぐられリピート鑑賞

2025年8月14日

2025年6月28日から配信が始まったアニメ「タコピーの原罪」が、2025年8月2日に最終回を迎えました。
原作はタイザン5さんによる同名漫画で、アニメは6話完結の短編シリーズです。
正直、配信前はこの作品のことをほとんど知らず、サムネイルを見て「ちょっと気になるな」くらいの気持ちでした。

出展:アニメ「タコピーの原罪」公式サイト
https://www.tbs.co.jp/anime/takopi_project/

タコっぽいキャラクターが目に入ったので、勝手にほのぼの系やコメディ系のアニメだと思っていたのです。
ところが1話を観てみると…予想を完全に裏切る衝撃の展開が次々と続き、気づけば一気に6話すべてを観てしまい、ラストでは大号泣。
その後も気持ちが収まらず、結局3周もリピートして鑑賞しまいました。
そんなドハマりしてしまった「タコピーの原罪」について、今回は思うままに語っていこうと思います。

あらすじ

「タコピーの原罪」の第一印象を一言でいうなら、“破滅版ドラえもん”といったところでしょうか。
作者自身も「陰湿なドラえもんをやりたいと思ったことがきっかけ」というコメントをしているようですね。

タコっぽい可愛いキャラクターが登場するので、一見ほんわかした作品に見えますが、実際はまったく別物。毒親、いじめ、コンプレックスなど、人の負の感情が複雑に絡み合う重たいストーリーです。
その中には暴力的な描写や残酷なシーンも含まれていて、人によっては「悲しすぎて観ていられない」と感じるかもしれません。
実際に地上波でのTV放送はなくWeb配信のみとなっています。

私自身もトラウマがまったくないわけではありませんが、幸いアニメと現実を完全に切り離して観られるタイプなので、こういった内容も割と平気です。(逆に、実写映画やドラマでリアルに描かれるとダメなものもありますが、アニメならほぼ大丈夫です)

物語は、ハッピー星からやってきたハッピー星人・タコピーと、小学4年生の女の子・久世しずかの出会いから始まります。
タコピーの使命は、みんなをハッピーにすること。笑顔にするために、「ハッピー道具」と呼ばれるアイテムを使って、さまざまな行動をしていきます。

そして、タコピー、久世しずか、雲母坂まりな、東直樹――それぞれが抱える悩みや問題と向き合いながら、物語は進んでいきます。

★以下、ネタバレあり要注意★

ここからネタバレがあります。

 

タコピーという存在

出展:アニメ「タコピーの原罪」公式サイト
https://www.tbs.co.jp/anime/takopi_project/

タコピーは、人をハッピーにして笑顔にすることが使命。
でも、人間の性格や常識には疎くて、悪意を感じ取ることができません。いじめやケンカの場面を見ても、「仲良しだっピね!」なんて言ってしまうほど、極端に空気が読めないことも多いんです。

それでもタコピーは、誰かを信じ、懐き、人のために動きます。馬鹿にされたり文句を言われても、頭の中は「どうやって笑顔にするか」だけ。
裏切ることなく、いつも寄り添い続ける――そんな存在が、この物語の大きな魅力の一つになっていると思います。

久世しずかの心境の変化

出展:アニメ「タコピーの原罪」公式サイト
https://www.tbs.co.jp/anime/takopi_project/

物語全体を通して、久世しずかの心の変化は作品の空気を大きく揺らしていきます。
雲母坂まりなからいじめられていた頃、彼女の心の支えは飼い犬のチャッピーだけ。希望なんて持てず、タコピーや東直樹からの助けにも背を向け、「何も変わらない」と無気力な日々を過ごしていました。そんな中、チャッピーが保健所に連れて行かれたことで絶望のどん底に沈み、自ら命を絶ってしまいます。

しかし、タコピーのハッピー道具「ハッピーカメラ」で時間を巻き戻し、何度もやり直す中で事件は思わぬ方向へ。タコピーが雲母坂まりなを殺してしまったあたりから、しずかの心は大きく動き始めます。
これまで全く他人に期待していなかった彼女が、「人は自分を助けてくれる」と感じるようになり、やがて他人に助けを求めるように。しかし、その助けが得られなくなると、今度は他人をうまく利用しようとしたり、失望や怒りをあらわにし攻撃的な行動に出るようになります。

また、タコピーが2022年に地球にやってきた世界線では、高校生になったしずかが東直樹を誘惑するような描写があり、もともと人を巧みに利用する本能や、ある種の魔性を秘めた人物なのだと感じさせられました。

ギャップを感じる演出

この作品を観ていて強く感じたのは、「ギャップのある演出」がとても多いということです。
例えば、ポップで楽しげなBGMが流れる中で、雲母坂まりながしずかをいじめ続けるシーンがあったり、東直樹が兄の指輪を盗もうとするシーンがあったりします。
2022年の世界線で雲母坂まりなが母親を殺す場面でも、タコピーが「小4の時に、久世しずかを、殺すってすれば、まりなちゃんハッピーだっピね」と明るく言いながらハッピー星に帰る描写も印象的でしたね。

その他、純真なはずのタコピーが、雲母坂まりなを殺してしまったり、しずかを殺すために過去へ戻ったり…。その時の「完膚なきまでに命を壊さなきゃ…」というセリフからは、可愛らしい見た目とのギャップを感じる凶暴さも見えます。

物語には、毒親やいじめといった重くて恐ろしい場面がある一方、コミカルで明るく、笑顔があふれる場面もたくさんあります。こうした振れ幅の大きい展開が、良くも悪くも視聴者の心を強く揺さぶる理由になっていると思います。

さらに、物語の始まりが2016年だと思っていたら、実は2022年だった――という展開も、驚きとともに一気に物語に引き込まれる大きな要因になっていますね。

難しくて分かんないっピ…

「タコピーの原罪」の物語には、“誰も明確な答えをくれない”という大きな特徴があります。
唯一、東直樹の兄・潤也だけは直樹に対してある種の答えを示しますが、久世しずかも、雲母坂まりなも、そしてタコピーも、「何が正解だったのか」「どうすればよかったのか」を見つけられず、もがき苦しみます。
その行き場のない想いは、やがて他人への攻撃や利用といった、負の感情の発散へとつながっていきます。

物語の終盤、しずかが東京から地元に戻り、タコピーにこれまでの感情をぶつけます。怒りや悲しみをむき出しにし、石を手にして殴りかかるほどの激しさです。
それをタコピーは黙って受け止めますが、しずかの「ねぇ、全部、全部、全部、一体どうすれば良かったって、お前、言ってんだよ…!」という問いに、タコピーは「分かんないっピ…、ごめん…、しずかちゃん…、僕には難しくて分かんないっピ…」と答えを出せずにいます。
そして、ただ手をぎゅっと握る“ハッピー握手”をしながら話を聞き、自分の無力さを謝るだけ。

この場面は、この作品の複雑さを象徴しているように思います。

そう、答えなんて簡単には出ないし、そもそも分からないことのほうが多い。これは現実でも、誰もが抱える本音です。
だからこそ、“おはなし”をして、「何をすればよかったのか」「相手はどう思っているのか」「自分は何をしたいのか」――それをお互いに少しずつ話し合って、理解していくことが大切だ、そんなメッセージをこの場面から感じました。

エンディング

物語のラスト、タコピーは自分の命を投げ出して、もう一度ハッピーカメラを起動し、過去へ戻ります。
もちろん、これまでと異なり、タコピーの存在が消えて過去に戻ることになります。
これまでのタコピーは、「人をハッピーに、笑顔にする」という使命だけを胸に、自分の思うままに行動してきました。相手の気持ちを深く考えることはほとんどありませんでした。

しかし、物語で出会った人の善意や悪意、優しさや残酷さ――さまざまな経験を通じて、タコピーは少しずつ成長します。人の気持ちを理解し、言葉を交わしてつながりを深める大切さを学んでいきました。

そして最後に、誰かのために自分の命を差し出すという大きな決断をします。
きっとそれは、タコピーが初めて本気で考え抜き、自分の意志で下した、たった一度の大切な選択だったはずです。

このシーンは本当に感情のピークでしたね…!
タコピーの成長と覚悟に胸を打たれ、同時にタコピーが消えてしまう喪失感が押し寄せてきて、涙が止まらなくなる場面でした。

ご都合主義という捉え方もあるかもしれませんが、私はこのラストのシーンがとても大好きです。

久世しずかと雲母坂まりなの関係性

タコピーが自らを犠牲にして過去に戻った後も、雲母坂まりなのいじめは相変わらず続きます。
でも、久世しずかが描いた“タコピー”のイラストをきっかけに、ほんの少しだけ二人の関係に変化が生まれます。

もちろん、すべてがハッピーエンドにならず、家庭環境は一切解決せず、二人の関係性も仲良くなるわけでもないし、わだかまりが消えるわけでもない。
それでも、タコピーという共通の微かな記憶の存在を通して、似たような家庭環境で育った“同士”のような距離感が生まれるんです。

ラスト近く、文房具屋で雲母坂まりなが久世しずかに軽くキックを入れる場面があります。しずかがそれを慣れた様子でかわす…このやりとりに、二人の微妙で独特な関係性がよく表れていて、とても印象的な演出でした。

細かく考察をしてみる

物語の中には、「あれ?」と思うような場面がいくつかあります。
ここで少し、そのあたりについて考察してみたいと思います。

久世しずかの母親の唯一の優しさ?

チャッピーが雲母坂まりなに噛みつき、保健所に連れて行かれたとき、久世しずかの母親は、チャッピーは東京にいる離婚した父親のところに行った、と嘘をつきます。
これは、母親が見せた数少ない優しさだったのかもしれません。
ただ、裏を返せば、しずかが大騒ぎしたり、極端に落ち込んだりして手がかかるのを避けたかっただけ、という冷めた解釈もできてしまいますが…汗
前者であってほしいと思ってしまいますね。

タコピーが東京から地元に戻る場面

東京で久世しずかがチャッピーに会えず、深く落ち込んでいたとき、感情のままにタコピーを石で殴りつけます。
その時に、久世しずかの狂気が潜む瞳を見て、タコピーはそれまで消されていた記憶を取り戻します。

その後、タコピーは地元へ戻ってくるのですが、一瞬だけ「パタパタつばさ」で飛んで帰ってきて、空き地の土管の中に入っていく描写があります。
ですので、東京から飛んで帰ってきたのかなと想像しています。

さらに、タコピーが「だから、しずかちゃん、探しにいこうっピ、目が醒めたら居なくなってて…」といったセリフを言う場面があります。これは、記憶が戻った影響で、前後の記憶などがあやふやになっているのではないかなと思います。

久世しずかは半年以上も東京にいた?

久世しずかが東京に行ったのは夏休みの始まりでしたが、地元に戻ってきたのは冬を越え、桜が咲く春頃。
つまり、少なくとも半年以上は東京で過ごしていたことになります。

タコピーと別れた後、しずかは東京で父親の子ども2人を誘拐する行動を取っていたと思われます。
チャッピーのこともありますが、父親への恨みや、父親のもとで幸せそうにしている子どもたちへの敵意もあったのかもしれません。
ただ、最終的には二人の子どもは無事に発見されたので、殺害にまで至らなかったのは安心できるポイントですね。

この行動だけで半年以上滞在する理由にはなりませんが、しずかの「一人で船に乗っちゃダメって言われたら、どうすれば良かったの?」というセリフから、船で帰る手段を選べず、行動が制限されていた可能性も考えられます。東京行きの計画も東直樹に任せていたため、移動手段についての知識はあまりなかったのでしょう。

東京では、花ピンやへんしんパレットなどのハッピー道具を使いながら、何とか日々を乗り越えていたのだと思われます。
最終的にどうやって地元に戻ったかは明確には描かれていませんが、長い時間をかけて情報を集め、ようやく帰ることができたのではないでしょうか。

東直樹とその家庭の状況

久世しずかから「自首してほしい」と頼まれた東直樹。
母親に依存していた彼は、しずかに頼まれた通り自首しようとしますが、兄・潤也の言葉によって心に変化が生まれます。

潤也は「分かんないことだろうが、悩みだろうが、何でも言っていいし、聞きたいよ俺は、お前は俺の…、弟なんだから…! できないことは、できないって良いって良いんだよ!」と本音をぶつけます。このやり取りによって、東直樹に心境に変化が起きます。

その後の展開は詳しく描かれていませんが、東直樹の家庭には不穏な噂が広がり、経営するクリニックは臨時休診が続き、母親は心労で寝込み、兄・潤也はバイトをクビになり大学進学も危うくなる、といった状況が説明されています。

ただ、東直樹が血をきれいに拭き取ったハッピーカメラをタコピーに返していることから、結果として自首はしていない可能性が高いと思っています。
久世しずかも「東くんはもう助けてくれないんだね…」と言っています。
また、弟思いとは言え、兄・潤也が弟の身代わりで自首したとも考えにくいでしょう。

ただ、東直樹はこれまでの出来事を兄・潤也に打ち明け、少なくとも東直樹の家庭内では、雲母坂まりなの殺害に関わる問題と向き合い、母親や父親も含め、これからどうすればいいかを考えている段階なのではないかと思われます。

ハッピー星の掟とは?

ハッピーママから、2つの掟について語られるセリフがありました。

  • 「ハッピー道具の掟、道具を使うときは、必ずハッピー星人の目の届く範囲で使うのです、決して異星人に手に道具を委ねてはなりません」
  • 「あなたは一人でここへ来た、ハッピー星もっとも大切な掟を破ったのです、二度と星に戻ることは許されない」

ハッピーママが語った2つの掟についてですが、1つ目は理解しやすいものの、2つ目は謎が残りますよね。

ハッピー星人はハッピー星に戻るとき、一人で戻ってはいけないというルールがあります。しかもこれは最も大切な掟で、破ると星から追放されるほど厳しい罰があるんです。
タコピーが久世しずかをハッピー星に招待しようとしていたことからも、人間を連れて帰る必要があることが推察されますが、その目的は謎に包まれています。
それほど重要で厳しい罰があるということは、異星人をハッピー星に連れてくる行動は、ハッピー星やハッピー星人にとって死活問題と言える要因が絡んでいるのかもしれません。

良い方向に考えると、異星人をハッピー星に連れてきて、ハッピーな体験をしてもらうことで笑顔になってもらい、その“ハッピーな気持ち”が何らかの形でエネルギーに変換され、ハッピー星やハッピー星人の活動の動力源になる――という設定も考えられます。もちろん、その後、異星人は無事に元の星に戻るイメージですね。
ラストでタコピーが自身のハッピー力でハッピーカメラを起動していることから、ハッピー星人は生物ではなく、エネルギー体である可能性も考えられます。

逆に、もっとダークに考えることもできます。
ハッピーママは記憶を消すなどの特殊能力を持っており、例えば異星人を連れてきて記憶を奪い、ハッピー星人として生まれ変わらせることで繁殖を目的にしたり、異星人の生命体を材料にハッピーフルーツやハッピー道具を作ったりすることも想像できます。
こう考えると、ハッピー星人は人間にとって単なる癒しの存在ではなく、潜在的な脅威にもなり得る存在です。もしその設定で描かれたら、作品の印象はまったく別物になってしまいそうですね。

仲直りリボンのタラレバ

正直なところ、最初から仲直りリボンを使って、久世しずかと雲母坂まりなの関係を変えていればどうなっていたのか、と考えてしまいますよね。
もちろん、それで簡単に解決してしまうと物語として面白くなくなってしまいますが…。

ただ、パタパタつばさのように、人間にはほとんど役に立たない道具もあるので、実際にどこまで効果があるのかは不明です。
作中では、久世しずかが首吊り自殺に仲直りリボンを使ってしまったため、逆にトラウマ的なアイテムになってしまい、タコピーも使用する発想を無くしてしまったという可能性も考えられます。

音楽

主題歌:ano「ハッピーラッキーチャッピー」

主題歌はanoさんの「ハッピーラッキーチャッピー」です。
声質がタコピーを思わせるので、まるでタコピー自身が歌っているかのような雰囲気があります。
曲は明るくポップですが、歌詞にはどこか深く考えさせられる表現もあります。
明るい曲調は作品があまり暗くならないように配慮されているのかもしれません。とても素敵な曲ですね。

エンディング:Tele「がらすの線」

エンデイングテーマはTeleさんの「がらすの線」です。
優しく包み込みながらも、どこか壮大さを感じる曲で、作品を見終わった後に、物語の余韻を壊さずにしんみりと心に染み込んでくる雰囲気があります。とても素敵ですね。
また、タイトルがひらがなの「がらすの線」は1分ほどのショートバージョンで、漢字の「硝子の線」がフルバージョンになっているようです。

サウンドトラック

サウンドトラックは2025年8月13日から配信されています。
物語全体は重めの展開ですが、「僕はハッピー星人!」「今日もがんばるっピ!」「魅惑の瞳」「これで大丈夫だっピ!」など、明るくポップなBGMも収録されており、楽しい雰囲気も味わえます。

まとめ

さて、いかがだったでしょうか。
短編ながら、ぎゅっと詰まった濃密な物語が心を大きく揺さぶり、「タコピーの原罪」は間違いなく胸を張って名作と呼べる作品です。
暗く重いシーンも多いですが、その中に明るさや希望を感じさせる瞬間もあり、観終わったあとも余韻が長く残ります。
きっと、また何度も繰り返し観たくなってしまう――そんな魅力を持った作品ですね。